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卵子提供に関する日本の法律と現状
日本では卵子提供に関する法律がない
日本では2018年現在、第三者介入による出産に関する法律は定められていません。そのため卵子提供による出産と、生まれてきた子どもの身分(戸籍)に関する法律も存在しないのです。またなんらかの義務や権利、保護などもありません。
しかし、海外で卵子提供を受けて日本で出産した例は増えつつあります。すでに生まれてきた子ども、これから生まれてくる子どものためにも一刻も早い法整備が待たれています。
海外の卵子提供に関する法律
次に海外での現状を見ていきましょう。
アメリカも日本同様、生殖補助医療に関する法律が認められているわけではありませんが、学会のガイドラインや州法によって規定されています。また、先進国のなかで商業的な代理懐胎を容認しているのはアメリカだけのようです。
イギリスではきちんとした法整備が行われており、生殖補助医療における親子関係も明確になっています。
そしてドイツでは法令はあるものの、卵子提供は認められていません。
卵子提供に関する法律があれば、自由に卵子提供による生殖補助医療が受けられるとは限らないのです。
またアジアでは、マレーシア、台湾、韓国、ベトナム、香港、インドネシアなどでも法律による規制が行われています。
日本でドナーを探すことは難しい
日本国内では、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の認定施設で治療を受けることができます。2018年現在、卵子提供が可能なクリニックは全国で5件。
日本で卵子提供を受ける場合、問題は卵子の提供者を「探す」ことです。
JISARTのガイドラインでは、原則として卵子の提供者は「匿名の第三者」でなくてはならないとされています。やむを得ない場合は親族、友人などからの提供は認められることがあります。
無償、かつ善意の第三者を探し出すのは容易なことではありません。JISARTの精子・卵子提供実績を見ると、実施数が10年で51件、出生時数は多胎も含めて10年間で51人。卵子提供に絞るとさらに少なくなります。
また、NPO法人OD-NET(卵子提供登録支援団体)では2018年現在、ドナーの募集はできますがレシピエント(被提供者)としての登録はできません。
このように日本国内では、ドナーエッグを探すことがそもそも難しくなっています。ですから日本では卵子提供が受けられず、海外で卵子提供を受けて出産する例が増えているのです。
卵子提供エージェントを利用すると日本人ドナーが探しやすい
卵子提供エージェントは、ドナーとレシピエントの仲介をしてくれる業者です。日本国内ではなかなかエッグドナーを見つけられないことが多いですが、謝礼を支払うのであれば卵子提供をしてくれる海外在住の日本人女性も存在します。
「日本人ドナーが探しやすい」、それがエージェントサービスを利用する最大のメリット。高い費用はかかりますが、残り時間に焦りを感じている人にとっては非常に現実的な選択肢です。
また手間はかかるものの、エージェントを介さずに自分で海外での卵子提供を受けることも可能です。
卵子提供を経た出産でも親子関係は認められる
日本では卵子提供に関する法律がそもそもありませんから、「卵子提供を経た出産で、出産した女性と子どもに母子関係を認める」という法律もありません。しかし最高裁では、母と子の親子関係について以下のような判決がなされた例があります。
“原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生するのが相当である”[注1]
分娩を行えば母子関係が認められるため、卵子提供によって出産した夫婦の子は、母の遺伝子を引き継いではいないものの自動的に嫡出子として認められると考えられます。
生殖補助医療の法整備が整っており卵子提供を認めている海外でも、分娩・出産を行った女性を法律上の親とする場合がほとんどのようです。
一方、代理母出産によって産まれた子どもの場合、生物学的には母親であっても分娩をしていないため、現在の日本の法律では実子とは認められません。
精子提供の場合、夫婦であれば男性が認知することで親子関係が認められるので女性が精子提供を受けて出産すれば嫡出子として認められます。また、夫が精子提供による出産を認めていれば、生まれた子を嫡子として認めなくてはいけません。