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卵子提供の子どもと親、その関係性について

加齢とともに、妊娠率や不妊治療の成功率は下がっていきます。不妊治療のかたちのうちの一つとして、「卵子提供」があります。これは、夫婦の妻以外の人間から卵子の提供を受けて行われるものです。その卵子に夫側の精子を体外受精させ、妻の子宮に受精卵を移し、子どもを出産する、という方法です。

この方法は、自力で子どもを得られない人に対してのみ行われる治療方法であり、その実施には慎重さが求められます。ただ、この方法は「どうしても子どもが欲しい」と願う夫婦にとって大きな希望となるものです。

今回は、この方法で子どもを得た場合、その子どもと両親の遺伝的な関係はどのようなものになるのか、また戸籍上はどのように処理されるのかを見ていきます。

卵子提供による不妊治療の場合、産みの母の遺伝子も混ざる

不妊治療のなかでも、「卵子提供」というのは非常にデリケートな治療方法です。このようなことを踏まえて、不妊治療で使われている卵子は夫妻の親族などから行われることもよくあります。

妻の親族からの卵子の提供であれば、当然生まれた子と妻も遺伝子的に関わりができることになります。

しかし、まったくの第三者(日本では卵子の提供者は匿名とされています)の場合は、産みの母親と子どもの間には遺伝的な関わりがないように思われます。

しかし現在、このような考え方に変化が起きています。

イギリスの大学の教授や博士によって作られた研究論文において、「子どもは胎児のうちは羊水の中で育つ。その羊水を通じてDNAを吸収するため、産みの母親との間でも遺伝子的な繋がりが生まれ得る」ということが発表されたのです。

これは、「卵子提供による妊娠―出産の場合、大切な我が子に自分の遺伝子が引き継がれない」ということを悩む女性にとっての、非常に明るい光明となる研究でした。

もっともこの研究によってもたらされたのは、「卵子提供による不妊治療」に対する明るいニュースばかりではありません。

「卵子はあるものの、自分の支給でこれを育てることはできない」という状態を解消するためにある「代理母による出産(代理出産)」のときでも、代理母の遺伝子が混ざる、ということを示唆する研究でもあるからです。

現在の日本ではこの代理出産は原則として認められていないとはいえ、一つの不妊治療に対する明るいニュースが、ほかの不妊治療に対して複雑な事情を付加するものになったというのは事実です。

卵子提供で生まれた子どもの戸籍は?

もう1つ、「卵子提供で生まれた子どもの戸籍はどうなるのか」という問題について見ていきましょう。

卵子提供で生まれた子どもの場合、戸籍上の親となるのは、「産んだ人とその配偶者」です。

日本の法律においては、「子どもの親」となるのは「子どもを産んだ人」である、とされています。このため、卵子提供者が戸籍上の親となることはありません。このため、「自分で子どもを産んだのに、その子どもが自分の子どもとならない」ということはありません。

産んだ人のDNAも子どもに交じりますし、戸籍上もその子どもを産んだ人が「母親」となるわけです。

逆を言えば、代理母出産によって子どもを得た場合、その子どもの戸籍上の母親は「代理母」になります。日本の現行法においては、卵子の提供者の立場に関わらず、「産んだ人」が戸籍上の親となるのです。

卵子提供は、不妊治療において大きな進歩をもたらす技術でした。日進月歩を続けるその技術は、同時に、遺伝子上についての研究も進んでいる分野です。そしてそのなかで、「羊水からDNAがうつる」ということがわかりました。

「自分の遺伝子を持った子どもを望む、しかし卵子の状態が……」と悩む人にとって、このニュースは、非常に大きな朗報だと言えるでしょう。

参考:(PDF)厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」

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