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加齢とともに起こる、卵子の質の低下とはどういう現象?
全ての卵子は生まれる前に製造ずみ?!
全ての卵子は、卵母細胞という細胞の分裂によって作られます。精子、卵子は各々23本ずつの染色体を持ちます。卵母細胞は2回の分裂を行って23本の染色体を持つ卵子へと変化します。
ところがこの卵子の原材料ともいえる、卵母細胞は生後新たに作られることはありません。妊娠5ヶ月後くらいには約700万個もある卵母細胞ですが、それをピークに減少してゆき、生まれるときには、200万個ほどに減ります。更に、初潮の頃までに30万個に減ります。30万個の卵母細胞の中から、実際に卵子として排卵されるのは400〜500個程度です。
つまり、全ての卵子は実年齢と同じだけの年数を経た、卵母細胞から作られるということです。
年とともに人の細胞から元気が失われてゆくのは、肌や髪などを見ても明らかです。ましてや代謝による入れ替わりがない卵母細胞の衰えは、想像するにも難くありません。
男性の精子は次々と新しい細胞が生産補充されますが、卵子は年齢と同じだけ年数が過ぎており、追加で生産補充されることもないのです。
1人の女性が持つ、卵母細胞の数を正確に知る方法は今のところありません。先ほどからあげている数字は、だいたいこの位という目安でしかなく、もっと少ない方も多い方もいらっしゃいます。卵母細胞がなくなってしまうと、もう卵子は作られません。つまり、自己卵子での妊娠は不可能になります。いつまで妊娠可能かという予測は不可能ですし、その意味でも高齢になっての妊娠出産には高い壁があるのです。
卵子が老化することで何が起きるの?
卵母細胞は2回の細胞分裂を経て、卵子へ変化します。この2回の分裂をそれぞれ、第一減数分裂、第二減数分裂と呼びます。定期的な排卵が始まるまで、卵母細胞は第一減数分裂の途中で待機状態で止まっています。
生理が始まり、定期的に排卵が起こるようになると第一減数分裂の続きが起こり、引き続き第二減数分裂を行って卵子となります。
ところが、年齢を重ねた女性の場合、この第一減数分裂が正常に行われず、染色体不分離という減少が起きるようになり、卵子の染色体異常が増えてくるようになります。
正常な卵子は23本の染色体を持ちますが、染色体異常の卵子は24本の染色体を持っています。精子は23本の染色体を持っているので、本来なら受精して46本の染色体を持つ受精卵ができるはずですが、47本の染色体を持つ受精卵となってしまいます。染色体異常の受精卵は、育たない、着床しにくい、着床しても流産の可能性が非常に高くなるなど、順調な妊娠出産へ至ることは大変難しくなります。
つまり卵子の老化とは?
年齢とともに卵子に起こる2つの現象を紹介いたしました。
1つめは、卵子の数の減少、2つめは卵母細胞から正常な卵子への細胞分裂に異常が起きる可能性です。この2つを総称して加齢による卵子の質の低下と呼んでいます。
では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。質の低下を防ぐことはできないのでしょうか。
まず、総量が決まっている卵母細胞の減少を防ぐことは難しいでしょう。そしてもう一方の細胞分裂の異常ですが、こちらもはっきりとした原因、プロセスが解明されていません。細胞の活力となるアデノシン三リン酸は、細胞内のミトコンドリアの働きで産生されます。このミトコンドリアの機能低下が起きると卵子の老化が起こりやすくなる、という研究報告もありますが、まだまだ詳細な仕組みはわかっておらず、染色体異常を防止するまでにはまだまだ多くの研究が必要なようです。