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JISARTにおける卵子提供の基準とは
日本国内での卵子提供施術を統括しているJISART(ジサート:日本生殖補助医療標準化機関)は、不妊治療を専門とするクリニックによって結成されている団体です。2003年3月に「安心と安全と満足を実感して頂ける生殖医療を提供する」という理念の元に設立されました。
JISART(日本生殖補助医療標準化機関)とは
生殖医療の発展のため、不妊治療を専門とするクリニックによって結成された団体で、2021年現在は全国31施設が加盟し、施設相互の審査と患者さんからの意見、要望のヒアリング、医師、看護師、医療事務などスタッフ教育のセミナーなどを開催しています。
また、卵子又は精子の提供を受けることに関するガイドラインが定められていて、このうち、JISARTの卵子提供ガイドラインの適応と認められれば、「卵子提供実子施設」において治療を受けることができます。
JISARTで卵子提供を受けるための条件
JISARTで卵子提供を受けるには、早発性卵巣機能不全などが原因で卵子が存在しない場合や、6回以上の夫婦間体外受精(採卵)によっても妊娠・出産へ進まず、妊娠や出産に至らない原因が卵子にある場合のほか、医師が、今後妊娠の可能性が極めて低いと判断を下したケースに適用されます。
さらに重篤な遺伝性疾患の保因者、もしくはその患者であり、着床・出生前検査および妊娠中絶を望まない場合のいずれかに該当することが条件です。
この条件は、加齢が要因となり妊娠できない夫婦は対象とはなりません。しかし具体的な判断は医師の裁量により、妻の年齢が50歳程度であることを目安として判断が下されます。
また、卵子提供を受けて生まれてくる子どもをきちんと養育していくことが可能と認められる夫婦であることも必須。夫婦の健康状態や精神的な安定度、経済的状況を判断材料として決定します。
1.卵子が存在しない場合
JISARTで卵子提供を受けるための条件の一つは、卵子が存在しないことです。例えば、40歳未満に卵子が消失して月経がなくなる早発閉経や、卵巣摘出などで卵子がない場合もありますが、このような状態にある女性は卵子の提供を受けなければ妊娠ができない医学的理由が認められるので、JISARTの卵子提供ガイドラインの適応となり、卵子提供実子施設において治療が受けられます。
2.体外受精で妊娠・出産に至らなかった場合
JISARTの卵子提供ガイドラインは、卵子提供を受けるための条件として次のことも定めています。
- 6 回以上の夫婦間体外受精(採卵)によっても妊娠または出産に至らなかった
- 不妊の原因が卵子にある
- 今後妊娠の可能性が極めて低いと医師が判断した場合
卵子に原因があるかどうか分からなくても、体外受精を何回行っても結果が出ない場合でも、JISARTの卵子提供ガイドラインの適応になります。
3.婚姻関係がある夫婦である
卵子提供受けられる3つ目の条件は、「婚姻関係が夫婦である」こと。この場合の婚姻関係について、JISARTの卵子提供ガイドラインは厳正に定義しており、被提供者については戸籍(日本国籍を有しない者については同等の公的書類)により法律上の夫婦であるという条件があります。従って、法律上の夫婦でない内縁夫婦は、婚姻関係があるとは認められません。
卵子を提供できる者の条件
1.原則20~35歳の女性
- 指定した提供者から卵子の提供を受ける特別の必要がある
- 提供される卵子に異常等がない根拠を医学的見地から提示できる
- 提供者の採卵時における年齢が35 歳以上40歳未満で、提供者とその配偶者、被提供者に対して以下に該当し、かつ全員の書面による同意が得られている状態
2.提供者は原則「第三者」
- 倫理委員会出席委員の3分の2以上の合意がある
- 匿名の提供者が見当たらず、親族,友人等の知られた提供者から提供された精子・卵子を利用することが医学的にも社会的にもやむを得ない
- その利用が生まれる子の福祉に反しないと判断される場合
卵子提供者の条件は、原則として20歳以上の成人であり、35歳未満(40歳未満)。原則、匿名の第三者でなくてはなりませんが、匿名の提供者が見当たらない場合、JISART倫理委員会で承認されることを条件に、被提供者にとって知られた者を提供者とすることが認められます。この時、提供された卵子に対する報酬などを求めることは禁止されています。
JISART 認定施設で治療を受ける場合の流れ
JISART(日本生殖補助医療標準化機関)とは、不妊治療を専門とするクリニックによって結成された団体のことを指します。ここではJISART認定施設で治療を受ける場合について詳しく説明していきます。
治療の流れ
条件を満たすか確認
ここからは、卵子提供者が姉妹または知人の場合の治療の流れをみていきましょう。まず、卵子の提供者を被提供者夫婦で選択し依頼します。次に、被提供者・提供者ともに条件を満たしているかどうか、非配偶者間体外受精相談カウンセリングを受けることになります。この条件を満たしていれば、被提供者・提供者が、初診前説明会と体外受精説明会への参加へと進んでいきます。
カウンセリング・ヒアリングの実施
卵子提供についての説明会を理解し、施設長が治療可能と判断すると、次に臨床心理士とのカウンセリングを受けてもらいます。カウンセリングは、被提供者と提供者ともに受けなければならず、被提供者と提供者それぞれ個別で「心理テスト」を受けることが必須となります。
その後、最終的に意思決定を行い、卵子提供に全員の同意が集められると、JISART の倫理委員会への申請へと進みます。この申請においても、個別のヒアリングが行われ、JISART倫理委員会で承認を得ることができれば治療開始となります。条件の確認から、説明会への参加、カウンセリングやヒアリングを経た後、治療がスタートできるまで約1年かかることを覚えておきましょう。
なお、倫理委員会より承認を受けた後は、治療の開始前、治療中、出産後もカウンセリングを受けることが可能です。
治療にかかる費用
費用は、被提供者と提供者との各種検査費、卵子提供のためのカウンセリングおよび心理テストのほか、その他諸経費や体外受精治療費などで約150万円かかります。
国内での卵子提供は難しい?
JISARTで卵子提供を受ける対象となるにはいくつかの条件があり、必要書類を用意して審査を通過しなければなりません。審査を通過して実際に治療を開始できるようになるまでは、約1年かかると言われています。具体的な条件としては、一つめが「50歳未満で早発性卵巣機能不全」であること。二つめが「夫婦で6回以上の体外受精を試みたが妊娠できず、医師も妊娠の可能性が低いと判断した」場合です。病気が原因で起こった早期閉経、遺伝的に妊娠が困難な場合に限定されているため、不妊治療を希望する人の大半が悩んでいる「加齢による不妊」が理由だとJISARTでは残念ながら認められていません。
また卵子は姉妹などの親族からしか提供が認められておらず、エッグバンクの利用もできないのです。不妊治療を希望している人の中には、身近な人にもなかなか伝えられずに治療を行っている人もいます。親族に卵子ドナーとして適齢の女性がいるか、そしてその女性が協力してくれるのかも考慮する必要があるでしょう。
審査を無事通過しJISARTが指定する医療機関にて卵子提供を受けるときは、検査やカウンセリングだけで100万円ほどの費用がかかります。体外受精などの費用も合わせると、1回あたり150万円程度になるでしょう。海外で卵子提供を行った場合、アメリカだと1回あたり500万円以上、比較的安い台湾でも200~300万円程度かかるので、それに比べると国内での卵子提供はリーズナブルな価格です。海外ではドナーに対し謝礼として50~80万円程度支払いますが、日本だとあくまでボランティアという扱いなのでドナーにかかる手術費用や経費以外は特に払わないことで金額にも大きな影響が出ています。
卵子提供エージェント一覧で比較はコチラ卵子提供の斡旋が受けられるクリニック
かしわざき産婦人科
かしわざき産婦人科は、新しい設備と医療体制を整えた産婦人科クリニックです。体外受精や顕微授精など一般的な不妊治療を行いつつ、日本の法律では禁じられている卵子の第3者提供にも精通。希望者にはカウンセリングときめ細かいサポート、十分な情報提供を行いながら、提携しているアメリカのクリニックを紹介したり、通訳を含めたコーディネートができるエージェントの紹介なども行っています。また、提供卵子ではサンフランシスコの機関とも提携しています。
電話番号:048-641-8077
セントマザー産婦人科医院
セントマザー産婦人科医院は福岡県北九州市にある不妊治療専門のクリニックです。JISARTの審査基準を満たした認定施設であり、さまざまな不妊検査や不妊治療が可能。卵子提供ではJISART認定施設、あるいは台湾のセンター紹介による治療が受けられます。
また、セントマザー産婦人科医院では、患者さんが通いやすいよう診察を平日・土日祝に実施。診察時間も夜まで設けているため、仕事をしながらでも無理なく通えます。遠方から来院する患者さんも多く、全国各地にある連携病院で治療を進めることもできます。
電話番号:093-601-2000
絹谷産婦人科
2019年度JISART施設認定審査における認定施設となった絹谷産婦人科は、1981年1月開設され、不妊治療成功例も豊富な産婦人科です。生殖医療専門医や、認定臨床胚培養士のほか、生殖医療相談士・体外受精コーディネーター、生殖・不妊心理カウンセラーである臨床心理士も在籍しています。
電話番号:082-247-6399
京野アートクリニック
JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の加盟施設として、卵子提供治療に対応しています。まだ実績数は多くないものの、テーラーメイドの医療提供を目指し、患者さんに寄り添った治療を行っています。
なお、卵子提供には細かな条件をクリアし倫理委員会の承認を得る必要があります。治療前には3ヵ月の熟考期間も設けられているため、じっくり検討してみてはいかがでしょうか。
電話番号:03-6408-4124