はじめての卵子提供ガイド

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日本の不妊治療と卵子提供

エージェント

不妊治療において卵子提供という方法があるのをご存知でしょうか。この方法は利用者にとってメリットが多く、とても注目されています。では具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?また日本で卵子提供を受けることはできるのでしょうか?この記事ではこうした点を取り上げています。

国内の不妊治療事情

卵子提供について解説する前に、先に国内の不妊治療事情について説明します。なぜなら、国内の不妊治療の事情を知ることで、卵子提供の重要性が理解できるからです。結論からいうと、日本の不妊治療は先進国の中でずば抜けて進歩しているとは言えません。

治療法はそれなりに確立していますし、治療を受ける人も少なくありませんが、種々の問題を抱えており、不妊治療による出生率もそれほど高くないからです。

こういった現状や、保険適用されていない不妊治療が多く経済的な負担が重いことなど、様々な課題を抱えているのが国内の不妊治療の実情です。

国内で行われている不妊治療 

国内で行われている一般的な不妊治療は、タイミング法、人工授精、体外受精の3つです。タイミング法は、検査結果に基づいて医師が妊娠しやすいタイミングを指導するというもので、健康保険が適用されます。人工授精は、文字通り人工的な処置によって精子を子宮に注入するもので、こちらは保険適用外です。

体外受精は自力での受精が難しい場合に行われる治療法で、体外に取り出した精子と卵子をシャーレの中で受精させ、カテーテルを使って子宮に届けます。こちらも人工授精と同様、保険は適用されません。以上、3つが国内における一般的な不妊治療です。

不妊治療で妊娠する確率について

不妊治療によって妊娠する確率は、治療法や患者の年齢によって大きく変化します。体外受精を例にとると、35歳では16.3%、40歳で7.7%、45歳で0.6%です。タイミング法では年齢ごとの確率は分かりませんが、全体の確率で周期あたり5%未満というデータがあります。

そして人工授精では、こちらも年齢ごとの確率は分かりませんが、平均で5~10%程度と報告されています。どの治療法でも、年齢が上がるにつれて確率が落ちるところが共通点です。

国内法整備と倫理的課題

法律の不備

日本では2020年に「生殖補助医療法」が成立し、「卵子提供で生まれた子の母親は出産した女性」と定めました。ただし、提供者の匿名性子の出自を知る権利など、実際に卵子提供を利用するうえで重要な部分は未だ法整備が進んでいません。そのため、ドナー情報の開示をどう扱うか、ドナーへの謝礼金をどう考えるかなど、多くがガイドラインや学会のルールに委ねられているのが現状です。

倫理委員会や学会ガイドライン

国内施設が卵子提供を行う場合、多くは日本産科婦人科学会(JSOG)やJISART(日本生殖補助医療標準化機関)のガイドラインに則っています。これらのガイドラインでは

といった条件を課しています。しかし、学会規定に強制力はなく、あくまで「推奨」という位置づけのため、クリニックの運用基準に差があり、患者が混乱しやすい面があります。

出生後の「告知」問題

卵子提供で授かったお子さんに対し、「どのタイミングで、どこまで真実を伝えるか」という問題も深刻です。海外では「18歳になったら出自情報を開示する」など法律で定める国もありますが、日本では親の判断に委ねられています。将来的に親子関係に影響する可能性があるため、カウンセリング体制や公的な指針が求められています。

今卵子提供が注目されている理由とは 

夫婦と赤ん坊

国内の不妊治療の成果が必ずしも芳しいとは言えない状況の中、今、一つの方法が注目されています。それは卵子ドナーから若い卵子を受け取って体外受精を行う、卵子提供です。この卵子提供はなぜ注目されているのでしょうか。大きく3つの理由が挙げられます。

一つは、20代の若いドナーの卵子を使うため妊娠成功率が上がること、そして出産者自身が採卵する必要がなく、体の負担が軽くて済むこと、最後に自己卵子で妊娠するより、流産やダウン症の発生率が下がるからです。

このようにメリットが少なくないため、卵子提供はとても注目されています。ではこの卵子提供ですが、希望すれば日本でも受けられるのでしょうか?

日本で卵子提供が受けられるか

卵子提供は、第三者のドナーから卵子を提供してもらい、健康な受精卵を作って妊娠率を高めるという方法ですが、日本でも提供を受けられるのでしょうか。結論からいうと、日本では卵子提供の恩恵が十分に受けられる環境にはありません。

卵子提供を紹介する団体や治療ができる医療施設はありますが、ガイドラインの条件が厳しかったり、卵子提供者を自分で探さなければならなかったり、関連する法律が十分に整備されていないといった要因から、十分な実績が挙げられていないというのが実情です。卵子提供を受けることはできますが、満足のいく体制はまだ作られていません。

卵子提供を諦めてはいけない理由とは

卵子提供を日本国内で受けるにはまだ十分な体制が整っていませんが、諦める必要はありません。実はあるサービスを利用することで、卵子提供を受けられるようにすることができます。

それは卵子提供エージェントです。エージェントとは代理人や代理店という意味で、本人に代わって卵子ドナーを探したり提供を仲介してくれる業者です。

卵子提供エージェントって何をするの?

卵子提供エージェントとは、卵子提供での不妊治療を希望する夫婦の代わりに、卵子提供者を探して紹介してくれる仲介業者のことです。

日本ではまだ馴染みがありませんが、海外では認知度が高く、存在感や重要度も高まっています。卵子提供エージェントは、クライアントからの依頼によりドナーを探し、候補者を厳正に審査したうえで卵子をクライアントに提供します。卵子提供を仲介する業者なので、治療は行いません。

卵子提供エージェントのサービス、費用、注意点は?

卵子提供エージェントが行うサービスを厳密に紹介すると、既述のドナー紹介に加えて、医療機関の紹介、ドナーに問題が起きたときの採卵補償、サービスの内容や段取りを説明するための面談も含まれます。費用はエージェントや提携先のクリニックによって異なりますが、大体300万~400万、高いところでは500万円以上かかるところもあります。

依頼者が考慮しておくべきリスクは、卵子ドナーに問題が発生する場合があることです。この点で各エージェントの採卵補償に注意を向けるのは良いことですが、対応の仕方はエージェントによって異なることを覚えておいてください。

エージェントを選ぶときのポイント 

卵子提供エージェントを選ぶポイントは多岐にわたりますが、重要なポイントは、料金、対応エリア、ドナー情報(登録数)、成功実績、提携先の病院の数、日本法人の有無などがあげられます。

料金については詳細かつ明瞭に表示しているかどうか、ドナー情報については登録数と関連情報の多さに注目してください。日本人か否かについては賛否両論あるかもしれませんが、日本人が利用する場合は日本法人のほうがコミュニケーションが取りやすく、安心できるでしょう。

日本国内における卵子提供エージェント 

卵子提供エージェントと聞くと海外を想像しますが、日本国内の卵子提供者の仲介団体もあります。具体的には、ActOne、リプロダクション、メディブリッジ、LA Babyなどです。団体名だけではサービス内容や違いが分からないので、興味のある方は各エージェントの公式HPをチェックしてみてください。

そこで紹介されている情報を詳細に見ていけば、自分の状況にあったエージェントが分かるでしょう。また、日本国内で事業展開している卵子提供エージェントを一覧表記した比較サイトもあるので、こちらも参考にしてください。

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卵子ドナー選定とリスク管理

記事の中ではエージェントの活用法や費用面に関して触れられていますが、もう一点重要なのがドナーの健康状態リスク管理です。

  1. ドナーの年齢
    多くのエージェントや海外クリニックでは、ドナーの年齢を「20~30代前半」に限定することが一般的です。若いドナー卵子のほうが妊娠成功率が高く、遺伝子異常のリスクが少ないと考えられているからです。
  2. ドナーの健康チェック
    採血や感染症検査、遺伝子疾患の家族歴チェックなど、さまざまな検査を行い、ドナーが安心して提供できるかどうかを慎重に判断します。日本国内ではボランティアドナーを募集している団体もありますが、検査制度がどこまで厳密に実施されているかは団体ごとに異なるため、十分に確認しましょう。
  3. ドナーの身体的負担
    卵子を採取するにはホルモン剤で排卵を誘発し、手術(採卵)を行う必要があります。ドナーに対して適切な補償(休業補償など)や万が一の際の保険があるかどうかも、エージェントやクリニックを選ぶ上で大事なポイントです。

出産後のフォローや育児サポート

卵子提供を経て無事に妊娠・出産をしても、その後のフォロー体制が万全とは限りません。特に以下のような点を事前に把握しておくと、育児に集中できるでしょう。

  1. 妊娠中のリスク管理
    高齢妊娠になる場合、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクも高くなります。卵子提供に限らず、高齢出産には定期検診の頻度や母体管理が重要です。
  2. 出自に関するカウンセリング
    将来的に子どもへ告知を行うかどうかはご夫婦で話し合いが必要です。専門カウンセラーや医師に相談しつつ、早期に方針を固めておくと、余計な不安が軽減されます。
  3. 産後のメンタルケア
    せっかく授かった赤ちゃんでも、産後うつやホルモンバランスの変化で悩むケースは珍しくありません。妊娠前から産後ケアを担う施設やカウンセラーの情報を集めておくと安心です。

卵子提供の将来展望

日本での普及は進むのか

不妊治療への保険適用が一部始まり、晩婚化が進む中、卵子提供を考える人は今後さらに増えると予想されます。ただし、提供者に対する金銭的報酬をどう位置づけるか、出自を知る権利をどこまで保障するかなど、解決すべき法的・社会的課題は山積しています。

いつかは国内でも安心できる環境へ

海外では国ごとにルールを整え、ドナー情報を公的に管理したり、子が15~18歳になったら出自を開示したりする仕組みが確立されている例もあります。日本もそうした海外の事例を参考に、国内でのマッチング体制や法整備を進めることが望まれています。

まとめ

日本で「卵子提供」というと、まだまだ「一部の人しか受けられない特別な治療」というイメージが根強いかもしれません。しかし、晩婚化に伴う卵子の加齢問題や、各種疾患による卵巣機能低下などを背景に、卵子提供は今後ますます需要が高まると考えられます。

卵子提供で妊娠を希望する方は、早いうちに情報収集を始め、複数のクリニックやエージェントを比較検討するのがおすすめです。また、夫婦間はもちろん、専門家(医師・カウンセラー・弁護士など)ともよく話し合い、長期的な人生設計を視野に入れながら進めていきましょう。いずれ日本国内でも安心して卵子提供を受けられる環境が整うことを願いつつ、現状では海外の制度や専門機関をうまく活用するのが現実的といえます。

はじめての卵子提供ガイド

40歳以上、早期閉経、ターナー症候群など、排卵の不順が原因で悩む方のための新しい不妊治療「卵子提供」。今や年間300人以上の赤ちゃんが、卵子提供によって誕生しています。そんな卵子提供について、日本が置かれている現状や、海外で移植を受けるために知っておくべきこと、また提供を受けた方、ドナーとなった方それぞれの体験談をリサーチした結果を掲載。卵子提供を望むご夫婦の強い味方となってくれる、国内のエージェントの一覧も掲載しておりますので、参考にしていただければ幸いです。

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